今ここの心理学…認知行動療法読本 3

■認知行動療法という難しい名前 2

黒木雅裕  2015年5月15日

認知行動療法という名前の「行動」という部分もなんだかちょっと面倒くさそうな感じがしませんか?

不安や心配が強い時には、人は積極的に行動できなくなります。気分が落ち込んだり焦ったりして、考えが空回りして行動するエネルギーが無くなるからです。

そんな時にさらに「行動」なんて言われると「あ、またなんかやらされるのかな、なんかやらなくちゃいけないのかな」と面倒くさいという思い反射的に浮かびまよね。

特に今の社会は、場を壊さないための暗黙のルールが張りめぐらされていて、その通りに行動することを求められますから、それだけでもこころは消耗させられます。

その上、仕事や人間関係で「やっぱり行動!」と競争させられますから疲れてしまうのも無理はないと思います。

てすから心理療法にまで「行動」という言葉を見せられると、反射的に「そういわれてもなかなか難しいよ」と尻込みしてしまいます。

もともと内向的でインドア派の僕なんかは特にそうです。問題が出てから重い腰がようやく上がるありさまでなかなか「まず行動だ」とはいきません。社会人としてどうかと思いますが、だからといってこの性格もなかなか変えられません。

ですから認知行動療法の名前を最初に聞いた時は「あ〜ここでも行動しろか」と残念に感じたものです。でも勉強を進めるにつれ、認知行動療法の中の「行動」はそんなに押しつけのものではないとわかってきました。

認知行動療法にとっての「行動」は、なんと言うか、心配や不安で動けなくなった私たちにエネルギーを与えてくれるサポーターのような役割なんですね。

「考え」や「気分」が凝り固まって動けなくなってしまった私たちの心を「行動」がほぐしてくれるようなイメージです。気分を変え考えのバランスをとっていく時に、行動のエネルギーをほどよく使うのです。

落ち込んだ気分は、ただ心の中で自分に「元気になれ!」と言い聞かせても元気にはなれません。「考え」のバランスを取ると同時に「行動」も使って気分や考えのバランスを取っていくのが認知行動療法なのです。