■認知行動療法という難しい名前
黒木雅裕 2015年5月8日
「認知行動療法」っていかにも難しそうな名前ですよね。長く勉強をしても今だに微妙な違和感を感じます。
まず「認知」の意味がよくわからない。「行動」が入ってるのもなにか面倒臭いことをやらされそう。なにより字づらがいかめしい。
直感的に理解できない名前なので、最初から興味を持てなくなる人も多いと思います。残念なところです。
しかし中身は違います。認知行動療法は、その名前のいかめしさとは反対に、実はとても簡潔で実用的な心理療法です。むしろあまりに単純すぎるほどです。
認知行動療法の基本的な考え方は、私たちの感情は私たちが自分自身に語りかける「考え」によって決まり、その「考え」によって大きくなったり小さくなるというものです。
たとえば仕事で何か大きな失敗をしたとしましょう。
ある人は「あっ、大変な失敗をしてしまった!まわりの人に迷惑をかけてすべて信頼を失ってしまった。私はもうダメだ」と考えて絶望したりする。失敗だけでなくさらに、そんな言葉を言い聞かせて自分を落ちこませるのです。
ある人は逆に「あ、大変な失敗をしてしまった!でも迷惑をかけた人にはちゃんと謝って理解してもらえばいい。それに失敗は前にもあったけれど今も回りからは信頼されてる。私はこの問題にも対応できるし大丈夫だ」と語りかけて気分を楽にしてりする。
同じ失敗をしても、その後の自分への「考え」が違えば、こんな感情の違いが生まれるんですね。
不安感が強くて心配性な人は最初の例のように、自分に対して「自分はダメだ」という声かけをしがちです。不安感や心配が問題のマイナス面にばかり目を向けさせるからです。
まず自分へのマイナスな「考え」が気分を落ちこませる。さらに落ちこんだ気分が自分へのマイナスな「考え」を強める。そうして行きすぎた不安や心配が生まれる悪循環を生みだします。
認知行動療法では、何か問題があった時に起こるこの「考え」のことを「認知」と呼びます。
その「考え」=「認知」を上手に取りあつかう心理的な技術を身につけ「考え」と「感情」の悪循環を防いでこころを楽にする…
それが認知行動療法の考え方です。