今ここの心理学…認知行動療法読本 10

◼︎こころの仕組み

2015年9月6日
黒木雅裕

認知行動療法の研修でうつ病の治療に必要な3つのポイントがテーマになりました。うつ病という病気をどう理解し、どう対応するかということですが当然日常の不安や心配へも応用できる内容です。

ひとつ目は「こころの仕組み」です。

私たちは普通、こころを一つのものとして感じ取っています。嬉しい、悲しい、不安だ、腹が立つなどの感情を、「気分」や「気持ち」という言葉で表現し自分の今の状態を知ってこころを安定させようとします。

認知行動療法ではこころを4つの要素に分けて理解します。そうする事でこころの働きかけやすい所とそうでない所が分かり、その状態を変えていくきっかけになるからです。その4つとは「感情」「考え」「体」「行動」です。そしてこの4つがお互いに影響しあってこころの状態が決まっていきます。

何か「出来事」が起こると、嬉しくなったり悲しくなったりなどの「感情」が生まれます。そして次にはその感情に誘発されて「私はすごい!」とか「私はダメだなあ」などの「考え」が生まれます。さらにその「考え」が「感情」を増幅させます。嬉しさがより大きな喜びになったり、逆に落ち込みが長引いて抑うつになることだってあります。

「感情」は「体」の状態にも影響します。嬉しければ体温が上がって顔が紅潮する事もありますし、不安や心配で体が硬直してしまうこともあるでしょう。「体」が元気になればさらにやる気になって行動することもありますし、落ち込んで部屋にこもってしまうこともあります。「感情」や「体」そして「考え」が「行動」にも影響するのです。

このように「感情」「考え」「体」「行動」がお互いに影響を与え、こころの状態が決まります。

認知行動療法では、この4つの要素が影響を与え合う事を「こころ」の仕組みととらえ、「なぜ不安や心配が起こるのか」「ではどのようにこころに働きかけるのか」を考えていきます。